第2プロジェクト活動記録
第2プロジェクト 第4回研究会
Afghan Reconciliation and Peace-Building
日時: |
2010年11月27日(土)13:30-17:30 |
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場所: | 同志社大学新町キャンパス 渓水館1階 会議室 |
発表者: |
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コメンテーター: |
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要旨: | |
アフガニスタン大統領民族部族問題担当顧問であるワヒードゥッラー・サバウーン(Waheedullah Sabawoon)氏は、日本とアフガニスタンの友好関係から説き起こし、旧ソ連の侵攻以来現在に至るまでの日本の変わらぬ援助に感謝の意を表し、アフガニスタンの現状について次のような概観を示した。 アフガニスタンはソ連侵攻後内戦状態に入り、ソ連の撤退後もアフガニスタンの安定を望まない近隣諸国の介入もあって混乱が続いた。状況に根本的な変化がもたらされたのは2001年の9・11事件であり、その後、アメリカの支援を得た北部同盟がタリバン政権を倒してアフガニスタンの伝統的な国民的意思決定機関である大ジルガ(議会)の承認を得て憲法が制定され現在の国家体制が成立した。 ヒズビ・イスラーミー・ムッタヒド(統一イスラーム党)は、かつての対ソ連ジハードを戦ったヒクマチヤールの率いるヒズブ・イスラーミーから分離したもので、現在においてもアフガニスタン全土に組織を展開する国民政党であり、政党ベースでは議会内最大勢力であるが、政権の中枢は北部同盟により占められており、ヒクマチヤールの率いるヒズビ・イスラーミーは未だに反政府武装闘争を続けている。 外国軍の駐留は、誤爆誤射により多くの民間人の犠牲者が出ていることから、国民の怨嗟をかっているが、現段階ではアフガニスタンの国軍、警察はタリバンと戦える力を備えていないので、アフガニスタンの平和の為には、まだしばらくは外国軍の援助の下で、国軍と警察の強化を進めざるをえない。サバウーン氏は、日本にはこれまで同様にアフガニスタン復興の為に引き続き援助をお願いしたいが、それに加えて西洋の覇権に対抗するアジアの独立のための連帯を主導してもらいたい、という期待を述べた。 政府の要職にあり、公式な発言を求められるサバウーン氏と異なり、ジャーナリストであり社会活動家である、スィディーク・マンスール・アンサーリー(Siddiq Mansoor Ansari)氏は、アフガニスタン政府が麻薬マフィア、大地主、軍閥などに乗っ取られており、議会制民主主義、選挙制度が有効に機能していないと明言する。 タリバンは元々、パキスタンの援助で形成されたものであるが、現在では国家の多くの部分を支配し、自分たちの州知事、裁判官を任命し、アフガニスタンの国土の多くは、日中は公式にはカルザイ政権の支配下にあるが夜はタリバンに支配されている。それは政府の腐敗と非能率のせいで、国民は清廉で迅速な行政を行うタリバンを支持している。ただし、それは国民がタリバンを好ましく思っているということではなく、国民はタリバンと外国駐留群とその傀儡のカルザイ政権の双方を嫌っているが、タリバンの方がましだと思っているということである。 外国軍とカルザイ政権がタリバンに勝つことは不可能であり、タリバンとの和解が求められる。タリバンとの和解には、和解交渉が行われるために、タリバンのメンバーが安全に出席できる中立的な場で、アフガニスタン政府とアメリカ、NATOから距離を置いた中立的な独立の組織による仲介が必要である。 アンサーリー氏は、日本はアフガニスタンに軍を派遣しておらず、伝統的に親日的なアフガニスタン国民の日本に対する信頼は厚く、日本は中立・独立的立場からアフガニスタン和平のための仲介役を務めるに最もふさわしい国であり、日本がイニシアティブを取って、中立的なアフガニスタン和平国際会議を開催してもらいたい、という希望を述べた。 同志社大学神学部・神学研究科教授 中田 考 |
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